ランチは誰と食べますか?気分転換はもちろん、職場フォローのチャンスだったりします⑤
前回までのおさらい。
【ケース2】
後輩看護師のAちゃんは、挨拶ができない、指示受けができない、静脈注射も外すのが通常、患者さん誘導もうまくできない、試用期間をどうするか悩む子でした。
前の職場も短く辞めてしまったから、うちでも辞めたら次は就職できないでしょう。
この子はどうしたもんか?と悩んでいました。
ランチ中のリラックスした彼女の会話を元に、私は彼女に対する姿勢を、褒め、協力を求めるように変更しました。
褒められ、自分がやっていることに対して認めてもらうことで、安心できる場所だと認識した。
安心できる場所から協力を求められることで、結果、頑張ろうと思った。
まさに「安全の欲求」が彼女の中で満たされたからこその流れだったわけです。
直接、技術や方法を指導するよりも、場所の提供をすることで相手が勝手に学んでくれたケースですね。
ある日、派遣さんが来ました。
その子は5年近く病棟で働いていたけれど、先回りして動けず、知識も足りず、スキルも中途半端。
Aちゃんよりも数年先輩だけど、どうにもAちゃんを彷彿する様な派遣さん。
さて、お仕事が楽しくなってきたAちゃん、どうするのか?
(ケース2の全文記事はこちら)
続きです。
5年も病院で働いている派遣さん。本来ならば、3年でプリセプター(新人教育をする側)を経験。看護師は大概3〜5年で大きな病院を辞める人が増えますから中堅に入ってきます。
派遣で働いているところしかみていませんが、どうにもまだ3年生のプリセプターは任せられないなという雰囲気でした。
めげて、もう来ないかな?と思っていましたが、その派遣さんは別の日もうちにエントリーし、出勤してきました。そして、朝の挨拶で開口一番で彼女は言いました。
「スキルや先回り行動を身に着けたいです!自分ができていないのはすみません。出来てないよ、勉強してごらんと言われたのは初めてでした。自分は出来ていると思って転職を検討していて力試し仕事にきたはずでした。ハッとしました。
数日間ですが、ここの職場にエントリーすることができました。yuenさん、私に教えてください!がんばります!」
もはや働く目的が、私に教わることですか?!と度肝抜かれたのを覚えています。鳩が豆鉄砲食らったような顔をしていたことでしょう。
そんな私をよそに、なぜかお仕事ができるようになったばかりのAちゃんは怒ってたんです。
派遣さんが外食に出かけ、後輩ちゃんと私の二人でランチを一緒にとっていた時のことです。Aちゃんは話し始めました。
「勿体ないですよね。教えてもらおうと思ってきてるのに、なんであんなに気づけないんだろう。」
と、吐露してきて笑いました。
「いやいや!君はそれ以上にできなかったけど、いまは軽く凌駕してできているよね。彼女が気づけていないとわかったりね。
それじゃあ、わかった。あなた自身、今と昔は違うね。自分はどうやって身につけたか、一番彼女の気持ちになってあげれるね。
考えて教えてごらんよ。フォローはするから、任せるよ。いい教訓できると思うよ。」
と、高いハードルを設けたのを覚えています(笑)
今思えば、まだまだAちゃんに設けるハードルとしては早かったかと思います。
しかし、数回に渡って派遣さんが働きに来るたび、私はどうしているかとAちゃんなりに行動観察している視線をひしひしと感じました。マネしてるマネしてると見守るのも可愛らしかったです。
ランチ一緒に食べないかと誘ってみてたり、雑談してみたり。ははは、そこか〜と思いながらコソコソ気づかないように笑ったり。
Aちゃんにとっても、きっと相手を知ろうとしたときに、ランチが自分のきっかけだったのかもしれないと思っての行動だったんでしょうね。
どうしても診療の横では、緊張するし、やることに集中してしまう。そういう個人に対するヒントは拾いきれないですから。便利だと彼女に受け継がれたんだなと思った瞬間でもありました。
派遣さんもわからないなりに、健気に会得しようとしていました。若い子もまだまだ捨てたもんじゃないと思った記憶があります。
その後、派遣さんだった彼女は他の病院に転職したそうです。彼女たちは仲良くなり、おともだちになったそうです。派遣さんの3年くらい年上で先輩だったと思うけど、Aちゃんが先輩のようなスタンスのようです。歳は関係ないですね、仲良くなれたのならなんでもいいかな。
こんなストーリーの一方で、同期や先輩たちには当時、やたらと褒めてる私をみるのが怖かったそうです。
あんなに自分に仕事に厳しい yuen が、そんな些細なことで褒めるのか?!裏があるのか?!!と悩んだそうです(笑)
裏はありますよ。育てたかったんですよ、彼女できるようになると思ってたから。実際に使い物になったから、それで満足してほしいところです。
まだまだ他にもケースはありますが、ケース1.2を通して、娘のような無邪気さも発揮すれば、母のような位置も、実に使えるんですね。
相手によって最適なスタンスをみつけると、自分の仕事を手伝ってくれる、フォローしてくれる人間が知らず知らずに増えます。見事に私はランチをきっかけとして「社会的欲求」まで3段階引き上げて満たしてくれる仲間を増やしてきました。
後輩Aちゃんと派遣さんのように転職してからも連絡とる人もいれば、仕事後に遊びに行く子もいます。もちろん年齢関係なく。
もちろん、仕事中は判断の連続ですから、厳しいこともお互い言うことがあります。それぞれの立場で患者さんにとって必要なことがあります。それを仲良いから言えないとかは本末転倒ですから、そこは容赦なく議論するべきです。
それだけだと実はきつい側面ばかりになってしまう。
それはそれ、これはこれとメリハリつけることができる場所があるとバランスはとりやすいです。
ランチをその位置にすることは可能です。
仕事中では相談しづらいけど、仕事後に引き留めるまででもない。
息抜き、ふらっと相談したい時にしてもいい場所、距離をとっても近づいてもいい場所。強制はしない。そんな感覚です。
ここまでのタイトルはなんでしたか?
「ランチは誰と食べますか?気分転換はもちろん、職場フォローのチャンスだったりします。」
それは「めんどくさがり」だから、
スタンスをつくるヒントを得る場所として活用するの便利だなと実感しています。
必要な厳しさと、相談できる隙をバランスよく設けられるメリハリの場所提供でもあると思うからです。
ぜひ、活用してみてはいかがですか?