看護学生に学ぶ

看護学生や働いて一番最初に躓くのは、親切と正義感の履き違え

各年代において、医療ドラマの定番があると思います。
私の世代では「ナースのお仕事」がとにかく有名でした。

出来る先輩となにかと危なっかしい後輩のドタバタコメディ。

その次に話題になるのは「救命病棟24時」でした。いつもとんでもないトラブル抱えた患者さんが担ぎ込まれては、解決しようと努力しているのを涙しながら見守るヒューマンドラマ。

 

ドラマを観ていた時は、医療関係の仕事に就くなんて思ってなかったです。

ただ単純に笑い、泣き、いろんな人生があるものだなぁと思っていました。

 

いざ、看護学生になり、看護師になれば、大変なんて言ってたら何回死んだら間に合うのかというくらいすぐに死んじゃいます。むしろ、どうやって笑うか?というところで、日々の気持ちを調整したり、背負いすぎないように注意するようになりました。

 

そこで看護学生になって、一番最初に躓くのは、

親切と依存の関係や○○をすべきだの正義論の愚かさです。

 

 

何を言っているか、例をにとってあげていきましょう。

 

Question

穏やかそうに車いすでいつも来ている男性がいました。
待合室で場所をとっていることを申し訳なさそうにしていました。委縮していても疲れてしまうので、別の場所で待っていても大丈夫だからと待機場所として空いていた処置室を案内しました。

その後数回に渡り、タイミングよく処置室は空いていたので同じように待機場所として受付に来るなりご案内することが続きました。彼の様子はとても感謝していましたが、受付で処置室を希望するようになったのはおやおや?と思っていました。

ある日、足を骨折してしまった女性に車いすを貸し出し、同じように空いていた処置室でギブスを作るまで待機していただいていました。

処置室で待機をいつも通り受付で車いすの彼から希望がきていると内線で連絡がで来ました。別の方が車いすで待機しているので使用不可であるので待合室で待つよう受付に伝えました。
すると、彼は受付から勝手に処置室に乗り込み、開口一番「そこは俺の待機場所だ!!どけ!!」と恫喝しました。

さて、穏やかだった彼に何が起きたのでしょう?

 

Answer

当初は申し訳なく気を遣ってくれていましたが、別室で待つという待遇が、

特別扱いされていると勘違いをしてしまったようです。

そして、自分の場所だと思い込んでいた彼は、自分のパーソナルスペースを侵されたと憤慨してしまった。 

 

これは、よくあることです。処置内容によって待合室での順番が変わってしまうときにも似たようなことはあります。特に、出血をしている、倒れたなどの、

普通の外来より緊急性が高い場合、医療者は外来よりもそちらを優先せざるを得ないケースがあります。

時には、時間がかかって、よりお待たせをしてしまうケースもあります。

 

すると、大半の人はしょうがないなとあきらめ半分で見守ってくれますが、

「なんでいつもこんなにかからないのに、緊急性があるからと言って常連を待たすんだ!」

というクレームが入ることがあります。

 

ここですね「常連だから優遇」ここが勘違いです。

もちろん可能な状況であれば、外来と並行で回すこともありますが、スタッフに限りがあります。優先しなければ危機的状況に陥る人が容易に予測できる場合は、そちらを当然優先します。

そこには、常連だろうと初診だろうと関係なく、救えるものは救いたいからです。

 

それを話しても当然理解できない人はできませんし、なんだったらそんなのは理想論だとか、火に油を注ぎやすくなってしまいます。

 

「あなたが危険に陥った時、私たちは救いたいです。もしお急ぎなら、またゆっくり対応ができるときに出直していただくか、お待ちいただくかお願いできますか?あなたが危篤の時、常連さんが来たから助けませんと言われたら困りませんか?申し訳ありません、ご理解ください、ここは人を救う医療機関ですから。」

と、いうと不貞腐れはするものの、おおよそ引き下がってくれます。

簡単に言うと、いや、常連だろうと優先順位になんら影響しません。待つか出直してください、クレームが出ようと結果はかわりません。これを言うのがお仕事に含まれているので、なるべくやらせないでください。我々も緊急性が高くてピリピリ緊張しているので、淡々と時間を割かねばいけないのは辛いですから。

 

では、先ほどの車いすの彼にも同じことですね。

 

「事故で急に動けなくなって、はじめて車いすになった時は不安じゃなかったですか?彼女は今、そのタイミングです。先輩ですものね、譲ってあげてください。

そしてここは、あなたの部屋ではなく、処置を優先する部屋です。空いていればご配慮することもありますが、毎回はできません。処置をしているときに開けてしまったらプライバシーの侵害になってしまいます。ご案内できない時は二度と開けないでくださいね。」

 

穏やかな通院をしていた彼に、やんわり怒らなければいけなくなってしまったという、後々を考えなかったミスと言えます。

今回のQuestionに対してのミスは、親切と正義感のはき違えです。

 

後々を考えなかったミスの詳細と正義感については、次の記事でまたお話します。