親切心や正義感に騙されない看護アセスメント。SOAPを使う。分析編③
分析編① で、高血圧の治療が必要なのは分かりましたが、
何についての情報が必要かわかりませんでした。
分析編② で、ざっくりとした情報収集で、
睡眠時無呼吸症候群に的を当てる必要性が見えてきました。
しかし、そもそも睡眠時無呼吸症候群の基準がわかっていなければ、分析➁の時点で的を絞ることも、今回情報収集することもできません。
よって、常に知らないことに出会った時が勉強をするチャンスです。
そして、看護学生や医学生が色んな科を座学や実習で回る理由です。
うっすらでもいいから、この可能性あるな、自分の分野ではないからあちらにお願いしたほうがいい、コンサルした方がいいと頭を過ってくれれば、その患者さんは前に進める手がかりを得ます。
さて、Q3 を見る前に、基準を調べてみましょう。
睡眠時無呼吸症候群の診断基準は、睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)を使います。
基準から抜粋すると、検査の他に自覚症状の記載があります。
ポリソムグラフィー検査(polysomnography:PSG)または、
検査室外睡眠検査(Out-of-center sleep test:OCST、自宅での簡易検査)
(PSGでは睡眠時間1時間あたり、OCSTでは検査時間1時間あたり/以下同様)
5回以上の無呼吸・低呼吸などの呼吸イベントを認めることに加えて、
下記1)〜4)のいずれか1つでも認めた場合
1)眠気や爽快感の無い睡眠、疲労感、不眠症状
2)呼吸困難感などで覚醒
3)ベッドパートナーなどから、睡眠中の習慣的ないびき・無呼吸を指摘される
4)高血圧、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害、うっ血性心不全、心房細動、2型糖尿病、気分障害(うつ)、認知機能障害の診断
あるいは、1)〜4)の症状が無くても、PSG、OCSTで15回以上の無呼吸・低呼吸などの呼吸イベントを認める。
ここを頭に浮かべながら質問し、SOAPに分けていきます。
S:
Q1
「いつもこれ(血圧の値)だからいい」
「倦怠感が最近強いからなにかの病気か」
Q2
「食事は気をつけているので、妻に管理されている」
「血圧は最近健診で年々指摘されるようになってきた。」
「その他の検査数値は何も指摘されたことがない」
Q3
夜間トイレに目が覚める
O:
Q1
血圧が160/90半ば。
Q2
中年男性。
メタボリックシンドロームがありそうな体格。
A:
高血圧があり、夜間のトイレで目覚める症状はICSD-3の睡眠時無呼吸症候群による自覚症状に該当。
上記症状がでてしまう原因としては、
・夜間の低酸素血症や覚醒反応(無呼吸のたびに苦しくて脳が目覚めてしまう現象)により交感神経が興奮する。
・無呼吸により胸腔内圧の低下、心臓にもどってくる静脈血の増加により、睡眠中に心臓に負担がかかり利尿ホルモンが持続分泌する。
その結果、しっかり夜中休めずに日中の倦怠感につながっている可能性がある。
P:
自覚他覚症状が該当しているため、ICSD-3には検査について基準数値があり、それにのっとって検査をすすめる。
いかがでしょうか?同じQuestion1~3でも、SOAPを使ってみると全然違いますね。
前までの記事では、かなり簡略化していましたが、基本こういう流れが含まれて数分で展開されています。
可能性を探る広範囲知識もきっかけとして必要になれば、
的を絞るために何が必要か深く掘っていく必要もあります。
なぜならば、一見関係なさそうな症状をいきなりこの病気の可能性があるといわれても納得しがたいですが、
関連づいて説明されると必要性を伝えられることができます。
問診していくだけでも複数回SOAPが展開できることもあります。
短時間でそれを展開していくのは、なかなかつかれると思いますが、こういう単純なことで展開する癖を作ると、後々意味が解らないということが減っていくかと思います。
ぜひ、これはなんだろうという視点を、SOAPを使って考えてみてください。楽になると思いますよ。